鶴姫の観音
- [2015年9月16日]
- ID:2903
昔むかし、岡本城を守っていた里見の大将が相模から美しいお嫁様をお迎えになりました。
お嫁様の名は鶴姫といい、船でおいでになったのですが、小さな船だったため、海が穏やかであるようにと、観音様を持ってこられました。
お嫁様は心の優しい方で、岡本浦の沖を通る船がみんな無事であるようにと、城山から海へ突き出た岬に、その観音様をお祀(まつ)りになりました。
お祀りされた観音様も、優しい御心をお持ちでしたから、沖の船を分け隔てなくお守りになりました。おかげで岡本浦もたいそう栄えました。
ところが、いく年か過ぎ、お嫁様が亡くなり、またいく年か過ぎ、立派だった岡本城が廃墟になり世が変わりますと、優しかった観音様がすっかりお変わりになってしまいました。「相模に帰りたい」と叫んでは海を荒らし、沖にさしかかった船へ難儀を与えるようになったのです。
恐れおののいた村人たちは、観音様に里心が出たに違いないと考え、観音様を海の見えない豊岡の海禅寺に移してお祀りし、御心を鎮めました。
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