桝ヶ池(ますがいけ)
- [2015年9月16日]
- ID:4236

聖山(岡本城址)の頂(いただき)から北東に向かって数十歩下がりますと、桝ヶ池という暗くて怪しい池があります。
昔からこの池は、みだりに汚したりしますと、祟(たた)りがあると恐れられ誰も近寄らなかったのですが、あるとき、川釣りの好きな老人が、野良仕事も一段落したので、桝ヶ池に大物を釣り上げようと出かけました。
「俺は迷信など気にしねえ」。
老人がつぶやきながら釣り糸をたれますと、はやくも、ググーっと浮きが引き込まれました。
「しめた」。
老人が勇んで、竿(さお)を握り立ち上がりましたが、糸はピーンと張ってびくともしません。ようやく水面に現れた獲物(えもの)を見ますと、くちびるの上に、ものすごいひげの生えた怪しい化け物です。
そのとき、澄み上がっていた空がにわかにかき曇り、雷鳴とともに大地を押し流すような大雨が降ってきました。老人は命からがら山をかけおりると、そのまま床につき、とうとう口もきかずに死んでしまいました。やはり老人は、桝ヶ池に祟られたのです。