野房(のぼう)の三吉狐(さんきちぎつね)
- [2015年9月16日]
- ID:1266

野房(のぼう)の松原 多田良(ただら)のたんぼ
月のない夜は 狐狸(こり)が啼(な)く
野房の三吉(さんきち) 丸山(まるやま)お玉(たま)
わしも少しは だまされた
という、歌が残る野房には、むかし三吉と名のついた狐が棲(す)んでいました。
その頃の多田良には茶屋が軒を並べ、くちびるの赤い女狐が、いや間違いです。きれいな乙姫様がたくさんいて、お金と交換にすばらしいお遊びをしようと、男の人を待ち構えていました。
その茶屋へ行くため野房を通る人たちに、三吉は悪さを重ねていましたが、ひょんなことから乙姫様のひとり、丸山のお玉に思いを寄せるようになりました。
畜生の一念が通じたのか、いつかお玉も三吉を愛するようになっておりました。
しかし、畜生と人間では添い遂げることはできません。悲しんだ三吉とお玉は、丸山岬(館山市船形)から抱き合って身を投げ果てました。
いま、丸山岬に残る「南無畜生頓証菩提(なむちくしょうとんしょうぼだい)」の古塚は、世にも珍しい人畜の情死を哀れんだ里人が建てたものです。