バカ貝は堅い
- [2015年9月16日]
- ID:1293
むかし増間村のある家に、上総から使いに来た人が、バカ貝をたくさん土産(みやげ)に持ってきてくれました。その上総の人は、「この貝は、腹に砂が這入(はい)っているので、腹は棄(す)てて身だけ食べるものです」と、親切に教えて帰ったのですが。
ところが、バカ貝を貰(もら)った家では、いざ、料理をする段になりますと、始めてのことですから、どうしたらよいものか、さっぱり判りません。とりあえず、小刀で貝の口を開けてみますと、上総の人が言ったように砂まみれの中身がありましたので、「これが砂の這入(へえ)った、腹っちゅう物(もん)だっぺ」と言いながら、中身をのこらず棄て、貝殻だけを大きな鍋で煮出しました。
早速、それを食べた親父が女房に向かって「汁は美味(うめ)えが身は堅(かと)うて食えねえよ」と言いますと、女房も、「そうだのう、上総の者(もん)は、ようこんな堅(かて)え物が食えるのう」と言ったそうです。