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瀬戸ぶんぶん

[2015年9月16日]

母と子

昔むかし、健田(たけだ)の瀬戸に一人の孝行な娘がおりました。老いた母と仲良く暮らしていたのですが、その母が重い目の病になったため、看護で野良仕事ができず。自分の食べ物を減らして、母へお粥を与えねばならないほど貧しくなってしまいました。
そんな日々が続いているある朝、母が病にやつれた顔を上げ、「大豆のお粥が食べたい」と言ったのです。娘は母の命が短いと悟り、その望みを叶えてあげようと、懇意な家を尋ねましたが生憎(あいにく)大豆は品切れでしたので、他の家に行きますと、そこでは、「銭を持ってこねば駄目だ」と分けてもらえませんでした。娘は、しおしおと家に帰りましたが、どうしても母の望みを叶えてやりたく、夜を待つと、その家の物置へ忍び込み一握りの大豆を持ち出したのです。
孝行娘のした行為でも悪い事は悪い事。夜番の男に見つかり、用心棒で打ち殺されてしまいました。しばらくしますと、不思議な事ですが、瀬戸では何度大豆をまいても、ぶんぶん虫が食べてしまい、絶対育たなくなったのです。誰とはなく、「孝行娘の崇(たた)りだ」と噂をしあいました。