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伊予ケ岳の天狗

[2015年9月16日]

伊予ケ岳の天狗

昔むかし、平群(へぐり)の伊予ケ岳(いよがたけ)に、天狗(てんぐ)が棲(す)んでいました。
天狗は神通力で人里に舞い降り、農家の納屋に置いてある米や、畑の野菜を盗む悪い奴でしたが、しかし村人たちは、その天狗の祟(たた)りが怖いので我慢していたのです。天狗はそれをよいことに、ある夜、ある家にとんでもない要求を書いた紙切れを投げ込んだのです。読みますと、「今月の満月の夜、村で一番きれいな娘を伊予ケ岳の下の天神社に連れてこい、もし断るならば儂(わし)の団扇(うちわ)で村中を吹き飛ばすぞ。」家の主は、びっくりして名主に知らせました。
名主は村一番の知恵者でしたから、「天狗が団扇でくるなら、こちらも団扇で懲(こ)らしめてやるべえ。」と言い、天狗の物より三倍の大団扇を作ると、伊予ケ岳に登り天狗に見せびらかしました。それを見た天狗は名主の大団扇が欲しくなり、自分の物と取り替えたのです。間もなくですが、得意になって大団扇を扇(あお)いでいた天狗が、山の天辺(てっぺん)から舞い降りますと、なんと眞っ逆さまにおちてしまったのです。天狗は団扇を替えたため神通力を失っていたのですね。