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竜の目

[2015年9月16日]

おりゅうと赤子

昔、白浜の杖珠院(じょうじゅいん)と呼ぶお寺に、おりゅうという名の女が、生まれたばかりの赤ん坊を抱いてきて言いました。「訳があって、この子と一緒にいられないので、どうか預かってください」お坊さんが見ますと、女は目が見えないので可哀想に思い、赤ん坊を預かることにしました。女は大喜びで、「この子が泣いたら、これをしゃぶらせてください」と言って、布に包んだ二つの白い玉を置き、帰って行きました。
お坊さんは女の言ったとおり、赤ん坊が泣くたびに白い玉をしゃぶらせ、大切に育てておりますと。ほどなく、杖珠院の池のそばに柳が生えたのです。
ところが、その柳が邪魔になったため、切り始めますと赤い血が吹きでたのです。驚いて切るのをとめますと、その夜お坊さんの夢枕に目の無い竜が立ち、「預けた子が心配で、柳になって見ているのだからきらないでください」と言ったのです。夢から、お坊さんは赤ん坊にしゃぶらせた白い玉が、女に姿を変えて現れた竜の、目だったことを知り、竜の情愛に深く胸を打たれました。