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勘解由(かげゆ)どんの猫

[2015年9月16日]

勘解由どんと猫

むかし、北朝夷(きたあさい)村に勘解由どんと呼ばれる名主がおりました。勘解由どんは横笛を吹くのが大好きでしたから、いつもかわいがっている白い猫にも、よく笛を聞かせていました。
その勘解由どんが、ある日、名主の会議に上総の天神山まで出かけましたが、天神山は北朝夷村から十八里もありますので、疲れで旅宿に入り休んでいますと、隣部屋で酒盛りが始まり、酒に酔った人たちの声が聞こえてきました。「勘解由どんがまいられたぞ、遅かった罰として笛を吹いて貰おう」
自分の名が聞こえ、勘解由どんが驚いていますと、今度は笛の音が流れてきました。それは、房州の祭り囃子で、いつも自分が吹く得意のものでした。その時でした。突然、「代官が見えた、会議でござる」という声がして皆が帰りましたので、勘解由どんは、奇妙なこともあるものだと隣部屋を覗きますと、乱れた酒盛りのあとに横笛が置き去りにされ、そのあたりには猫の毛がいっぱい飛び散っていました。勘解由どんは、笛を吹いたのは儂(わし)の家の猫だったのかと、また驚きました。