ページの先頭です

火伏せの腰巻

[2015年9月16日]

宿場

むかし、平群(へぐり)の天神郷(てんじんごう)は宿場でしたので、たいそう栄えていましたが、ある年に火事が起き、大方の家が焼けたことがありました。しかしその時、運よく類焼を免れた家が一軒あったのですが、その家の庭に赤い腰巻が干してあったため、間もなく天神郷に、「赤い腰巻には、火伏せの霊力がある」という噂が広まりました。
それから幾年か過ぎたある年のことですが、その天神郷に、またある家から火事が起きたのです。加えて風も吹き出し、真っ黒な煙が集落の中心地を覆ったため、大騒ぎになりました。むかしの家はみんな茅葺(かやぶ)き屋根なので、火の粉がひとつでも舞い落ちれば一大事、無事では過ぎません。
さあ、そうなりますと「赤い腰巻などが火伏せの役に立つものか。迷信だ」と言っていた人も、大急ぎで赤い腰巻を竿に結び、屋根に立てたのです。近くの集落から火消しの応援に来た人たちは、それを見て呆れたそうですが、ひらひらとはためく、たくさんの赤い腰巻のお蔭で、志気があがり、延焼を食い止めることができました。