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芋井戸

[2015年9月16日]

お坊さんとお婆さん

昔むかし、房州の青木(あおき)の里に住んでいた意地悪な婆さんが、ある日、清水の湧く井戸端で里芋(さといも)を洗っていると、「お婆さん、私にその芋を少し分けてくださらんか。」と静かな声で頼む人がいました。
振り返って見ると、そこにはみすぼらしい旅のお坊さんが立っていましたので、婆さんは、「お前さんにやる芋はねえよ。」とけんもほろろに断りました。旅のお坊さんは重ねて芋を布施(ふせ)してくれるように言ったのですが、それでも婆さんは、「この芋は石芋(いしいも)で食えねえよ。」と嘘をついてまた断りました。お坊さんは、「さようか、石芋か。」と言い、婆さんの姿をじっと見ていました。
家に帰った婆さんが、芋を煮て、食べようと口に入れたところ、どれも石のように固く食べられなかったのです。
怒った婆さんが、その芋を洗った井戸へ投げ捨てますと、何と、煮た芋なのに青い葉が出て、間もなく井戸いっぱいに広がったのです。
婆さんは驚き、「あのお坊さんは弘法大師(こうぼうだいし)様だったに違いない、私は悪いことをした。」とすっかり改心し、信心深い優しい人になりました。