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天狗の差し入れ

[2015年9月16日]

天狗

昔むかし、明石(あかし)村(三芳)の山中で、数人の百姓(ひゃくしょう)たちが炭焼きの仕事をしていました。ところがその日は、たいそう寒い日でしたから、百姓たちが、いくら一所懸命に炭木を切っても、運び出しても、体が少しも温まらなかったのです。
そこで皆が「濁酒(どぶろく)でも飲んべえ。」と、山小屋に入り濁酒を飲み始めたのですが、間もなく酔った誰かが、「素酒(すざけ)は味気無え、山鳥でもあれば旨(うめ)え肴(さかな)になんのになあ。」と言いますと、小屋の窓の外から大きな声が聞こえてきたのです。「山鳥なら、あるぞ。」
百姓たちは、自分たちと同じ村の者が差し入れに来たのだと思い、「おお、貰(もら)うべえよ」と返事をして、窓の方へ一斉(いっせい)に目を向けますと、そこから、「ほら食へ。」という声といっしょに、山鳥を掴(つか)んだ毛むくじゃらの大きな手が、ニューっと入って来たのです。百姓たちはびっくり仰天。「てっ、てっ、天狗だぁ。」と叫び、飛んで家に逃げ帰りました。