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鐘が淵(かねがふち)の鯉

[2015年9月16日]

鐘が淵

むかし、瀬戸川(せとがわ)上流の「鐘が淵(かねがふち)」で、ある一人の漁師が大きな鯉(こい)を釣り上げました。漁師は喜んで家に帰り、料理をしようとしますと、家の表に人の気配がしますので出てみますと、見かけない美しい娘が立っており、「母親の病気を治したいので、是非、鯉を譲ってください。」と、言ったのです。
漁師は、せっかく苦心して釣った鯉でしたが、娘の顔が余りにも神々(こうごう)しく、しかも一所懸命(いっしょけんめい)に哀願しますので、快く鯉を譲ってやりました。
しかし、見かけない娘なので不思議に思い、漁師が後をつけますと、暗い夜道であかりも無いのに、娘の姿が、くっきりと浮かび上がって見えるではありませんか。なおも後をつけて行きますと、やがて娘は鯉を抱いたまま、自分が鯉を釣り上げた鐘が淵の中へ、すっと消えたのです。
驚いた漁師が淵に走り寄ってみますと、小さい鯉が大きな鯉を囲んで、うれしそうにたわむれ泳ぎまわっているのが、夜目にはっきり見えたのです。それから、その漁師は大漁続きとなり、村一番の分限者(ぶげんしゃ)(金持ち)になったと言います。